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Pau Casals

Please click the icon. 『鳥の歌』を編曲したパブロ・カザルスさんについて

Pau Casals
パブロ・カザルスとは カザルスの心 パブロ・カザルス喜びと悲しみ パブロ・カザルスの生涯 鳥の歌 回想のカザルス カザルスとの対話 「無伴奏チェロ組曲」を求めて カザルスと国際政治

特にお勧めのパブロ・カザルスに関する書籍です

パブロ・カザルスとチェロ
カザルスの心

 

カザルスの心 -平和をチェロにのせて-

著者:井上頼豊

出版社:岩波書店(岩波ブックレット)

ISBN: 978-4000031523

発行日:1991/8/2

 著者は、日本の代表的なチェリスト井上頼豊氏。[連歌 鳥の歌]プロジェクトの代表者 井上鑑さんのお父上です。54ページのブックレットの中にカザルスの心が凝縮され、カザルスの生い立ちから修行時代、巨匠への道、スペイン内戦と亡命、プラード音楽祭、日本での演奏会、平和への活動、そして、国連にて『鳥の歌』が演奏された当日の様子まで記されています。

 カザルスが日本を訪れたのは、1961年(昭和35年)のこと。84歳のカザルスは、愛弟子である平井丈一朗氏の公演にてみずからが指揮を執っています。このとき「パブロ・カザルス チェロ特別講習会」も開かれ、頼豊先生もじかに指導を受けます(当時49歳)。そのときの興奮があざやかに伝わってきます。

 1971年(昭和45年)10月24日の国連の日、ニューヨーク国連総会会議場では、平和の歌『鳥の歌』がカザルスみずからの演奏によって鳴り響きました。本書はこの場面から始まり、当日の写真も掲載されています。このくだりには、心打たれるものがあります。コンサートの様子は日本でもテレビ放映され、現在はyoutubeにて閲覧できます

「『鳥の歌』は今も世界中で演奏されていますが、カザルスが『鳥の歌』にこめた意味と思想を知って演奏されているとは、かならずしもいいきれない」と頼豊先生。「『音楽とは人間にとって何なのか。そして平和と民主主義がまもられていない今、あなたがたはそれでいいのか』とカザルスは『鳥の歌』の中で問いかけているのではなかっただろうか」とも。

 カザルスの心を知るうえで、必ず目をとおしておきたいブックレットです。

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パブロ・カザルス 喜びと悲しみ

 

パブロ・カザルス 喜びと悲しみ

編集:アルバート・E・カーン / 翻訳:吉田秀和、郷司敬吾

出版社:朝日新聞社(朝日選書)

ISBN: 978-4022595393

発行日:1991/12/25

 93歳のパブロ・カザルスによる回想録をAlbert Eugene Kahnが編纂した一冊です。カザルスの生涯はつねに、喜びと悲しみが背中合わせにありました。もしカザルスが、自身や家族の利益だけを最優先するような人物であったのなら、ここまで深い悲しみや憤りを感じる生涯にはならなかったことでしょう。

 1年に250以上もの公演を行う演奏家になってからも、「自分は庶民である」と認識し、祖国カタロニアや世界の平和に心を砕き続けます。カザルスの思想の原点には、つねに母親ピラールの存在がありました。彼女は自身が正しいと確信することを行い、他人の意見に左右されない人物でした。法律をもってしても、「母は特定の法律はある人たちを守るが、他の人々には危害を加えることを知っていた」ため、自身の信念に反するものには断固拒否する姿勢を貫きます。この精神は、カザルスにも綿々と受け継がれていきます。

 教会付きオルガン奏者の父親の収入では生活に困窮することも多く、幼少時のカザルスは極貧生活の苦しさを身をもって体験しています。この経験も、カザルスの精神形成と演奏活動に良い影響をもたらしたようです。裕福な家庭に生まれ育ってしまった人には共通して冷酷さと高圧的目線を感じることも多いのですが、その原因は貧困生活の経験がなくて「痛みを知らない」ことが大きいと個人的には思っています。

 本書には、重みのあるメッセージが数多く詰まっています。多くは『パブロ・カザルス 鳥の歌』に受け継がれていますが、それ以外にも現代人が忘れてはいけない重要なキーワードが登場します。自身の生きる意味を見失いそうになったとき、ぜひ読み直したい一冊です。

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パブロ・カザルスの生涯

パブロ・カザルスの生涯

編集:ロバート・バルドック / 翻訳:浅尾敦則

出版社:筑摩書房

ISBN: 978-4480872326

発行日:1994/01

 ●現在執筆中です。しばしお待たせいたします●。

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鳥の歌

パブロ・カザルス 鳥の歌

編集:ジュリアン・ロイド・ウェッバー / 翻訳:池田香代子

出版社:筑摩書房

ISBN: 978-4480031884

発行日:1996/09

 カザルス自身の言葉とカザルスに関わっていた人たちの証言やエピソードを、イギリスのチェリストJulian Lloyd Webberが編纂した一冊です。「演奏と緊張」「戦争と平和」「カザルスと批評家たち」「バッハ」のようにジャンル分けされているので、興味のある部分を集中的に読んでみるのもよいかもしれません。

 才能に慢心せずつねに努力と練習を怠らず、自身の信念をいっさい曲げなかったカザルス。頑固一徹だけの大人と思いきや、いたずら好きでお茶目な子ども心も持ち合わせていたり、懐の深い慈愛に満ちた大芸術家であったことがわかります。

 中でも、現代音楽に対する嫌悪感と容赦なく攻撃する様子には、思わず苦笑いがこみあげてしまいます。現代音楽のかなりの部分を「音楽以前のなにか」であると言い、「音のなかでこじつけをしたり大見得を切ったりしている」とカザルス。その現代音楽を奏でるアーティストたちが今[連歌 鳥の歌]プロジェクトにて『鳥の歌』をそれぞれ演奏する姿は、天国のカザルスにはどのように映っているでしょうか。

 カザルスの一言には、とても重みのある言葉も多いです。

 「あなたはたまたま才能をあたえられているのだから、うぬぼれてはいけない。それはあなたの功績ではない。あなたが才能を創ったのではないのだから。問題はあなたがその才能からなにを創りだすかだ。才能はたいせつにしなければならない。あたえられているものを無駄にしないように。勉強しなさい。たえず勉強しなさい。そして才能を育てなさい』(『パブロ・カザルス 鳥の歌』156ページより)

 2013年6月のとあるライブにて、何度もこの言葉が蘇ってきました。環境に甘え、才能に胡坐をかき、付け焼刃で行われるライブでは、人を感動させることは難しいようです。

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回想のカザルス

回想のカザルス

著者:井上頼豊

出版社:新日本出版社

ISBN: 978-4406024860

発行日:1996/12

 『カザルスの心』同様、著者はチェリスト井上頼豊氏。カザルスを「人生の師」と敬う頼豊先生らしく、カザルスと音楽との関わり方やチェロに関する記述がとても熱いです。国連で『鳥の歌』が演奏された際の記述だけでなく、1961年(昭和36年)4月に一度だけ来日した際の公開レッスンの様子、さらに1983年(昭和58年)6月に井上家御一行がヴェンドレルのカザルスの墓を訪れた際の出来事に至るまで、じつに情熱的に綴られています。また、チェロに関する考察、『無伴奏チェロ組曲』の楽譜、カザルスの生きた時代の音楽業界の様子なども、本書から学ぶことができます。

 本書を読むと、「カタルーニャ」のもつ際立った特徴とパッションも理解できることと思います。フランコ独裁政権下、カタルーニャ語も禁じられている中でも敢えてカタルーニャ語でミサを行い、カザルスの宗教曲を歌い続けていたモンセラート修道院。フランコ軍に占拠されてしまったサンサルバドルのカザルス邸や貴重な資料を、半ば犠牲的になりつつも協力して守り抜いたカザルスの弟ルイスやヴェンドレルの市民たち……。カタルーニャの人たちのゆるぎない信念や団結力をうかがい知ることができます。今回のプロジェクトを「私の文化活動」と申された日本の女社長が、なんとも薄っぺらに思えた瞬間です。

「彼のほんとうの偉大さは、音楽と人間への深い愛であり、音楽を通じて平和と自由の大切さを勇気と誠実をもって訴えつづけたことにあるのではなかろうか」と頼豊先生。「音楽家は音楽家である前に、まず人間でなければならない」というカザルスの信念は、頼豊先生にも、そしてご子息 井上鑑氏にも綿々と受け継がれているようです。

※本書をもとにして「パブロ・カザルスの半生マインドマップ」を描きました。

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カザルスとの対話

カザルスとの対話

編集:J.M.コレドール / 翻訳:佐藤良雄

出版社:白水社

ISBN: 978-4560080115

発行日:2009/05

 ●●●現在執筆中です。お待たせいたします●。

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「無伴奏チェロ組曲」を求めて

「無伴奏チェロ組曲」を求めて-バッハ、カザルス、そして現代

著者:エリック・シブリン / 翻訳:武藤剛史

出版社:白水社

ISBN: 978-4560081303

発行日:2011/5/6

 『無伴奏チェロ組曲』をヨハン・セバスチャン・バッハが作曲したのは1720年代、ドイツのケーテンにおいてでした。それから約200年もの間、このチェロ組曲は単なる練習曲の寄せ集めと軽視され、一部の音楽家の間にしか知られていませんでした。

 パブロ・カザルスが『無伴奏チェロ組曲』を見つけたのは1890年、父親とともに古本楽譜屋を見て回っているときでした。13歳のカザルスは、スコアを読み返してさっそく研究を続けます。このチェロ組曲をカザルスが公衆の面前で演奏する自信と覚悟ができるまでには、12年もの月日を要しました(最初の記録があるのは1901年10月17日)。1901年~1904年にかけてカザルスは、さまざまな都市に出向いて『無伴奏チェロ組曲』の全曲演奏を行っています。

 著者が『無伴奏チェロ組曲』に出合ったのもまた、何気なく足を運んだコンサートでした。奥深い演奏に感動した著者は、組曲に関わった二人の人物、バッハとカザルスの生涯を追いつつ、このチェロ組曲について考察を始めます。本書はその集大成をまとめた一冊です。章は「第一組曲 ト長調」「第二組曲 二短調」に始まり、「第六組曲 ニ長調」まで。節は「プレリュード」「アルマンド」に始まり「メヌエット」「ジーグ」と、章や節のタイトルもチェロ組曲の構成をなぞらえています。

 著者エリック・シブリンは、カナダに拠点を置くフリーのジャーナリストであり、映画製作者です。それゆえ、バッハやカザルス個々に関する記述もそれぞれコンパクトで読みやすくまとまっています。まずは、カザルスについて書かれたパートだけを拾い読みしてみるのもよさそうです。

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カザルスと国際政治

カザルスと国際政治

著者:細田晴子

出版社:吉田書店

ISBN: 978-4905497134

発行日:2013/7/30

  パブロ・カザルスに関する書籍は、ほとんどが「音楽とチェロとカザルス」の切り口から書かれています。

 一方、本書は、カザルスが愛してやまなかった「カタルーニャ」をメインテーマに置き、カタルーニャのもつ民族性を考察しつつ、カタルーニャとカザルス、カザルスを取りまく政治、カタルーニャが結びつけたカザルスと音楽との関わり方について記述しています。

 もともとはキリスト降誕を祝う子守唄だった『鳥の歌』を、何故カザルスは敢えて選んだのか。『鳥の歌』が、何故カタルーニャの人々に深く愛されて歌い継がれていったのか。本書からはその答えを読み取ることができます。カザルスにとって『鳥の歌』は、唯一無二で必要不可欠だったことを、本書を通して理解しました。

 著者の細田晴子氏は、東京外国語大学スペイン語学科のご卒業、マドリードのコンプルテンセ大学にて歴史学博士を取得しています。外務省に入省し、在スペイン日本国大使館などで勤務。現在は、日本大学商学部の助教授をなさっています。本書ではスペイン語に秀でることもフルに活かされ、従来のカザルス本では深く掘り下げることのできなかった冷戦期の文献も多数織り交ぜながら考察されています。読み解かれたカザルス文献の数は、本書の右に出るものはないように思います。ロジカルでシャープな文章から硬派な印象を受けましたが、写真を見てビックリ。理知的でたおやか、才色兼備な女性でした。

 カザルスからもカタルーニャからも中立的な立場を保ち、どろどろとした国際政治の実情について滔々と語る文章は非常に心地よく、いつしか引きこまれ、何度でも読み返したくなるカザルス本です。

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 スペイン・カタルーニャ地方生まれのパブロ・カザルスは、20世紀の生んだ天才的音楽家の一人です。1876年12月29日~1973年10月22日。

 当時のチェロは、両肘を両脇につけて演奏していました。音楽学校に通っていた12歳のカザルスはこの奏法に違和感をいだき、両脇から離して演奏するスタイルを確立。さらに、指使いと左手の動きも改良し、このおかげで同じポジションで半音広く弾けるようになったのです。また、バッハの『無伴奏チェロ組曲』を再発見し、広く浸透させたのもカザルスの功績です。

 カザルスは、スペイン内戦勃発とともにフランスに亡命し、以後も時代の波に巻き込まれつつも独裁政権への抗議と反ファシズムの立場を貫きます。1950年代後半からは、核実験禁止の運動にも参加しています。

 1971年10月24日(国連の日)、ニューヨーク国連本部にてチェロを演奏し、国連平和賞が授与されました。この席で『鳥の歌』を演奏する際のカザルスの言葉は、彼の心を象徴しています。

「私の生まれ故郷のカタルーニャでは、鳥たちは"peace peace peace(平和、平和、平和)"と鳴きながら空を飛んでいるのです」

 

パブロ・カザルスとチェロ