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意身伝神@ISIS本楼 極上の音+カラダ+コトバ

10月25日、[カザルスと土方巽に捧げる一夜~意身伝神]がゴートクジISIS本楼にて行われた。

季節外れの大型台風27号+28号が「藤原の効果」で太平洋沖を迷走している……。再び校長が嵐を呼んでしまったのかも?とドキドキする中で迎えた当日だった。

今回の[意身伝神]は、複数の要素を兼ねている。まずは、7月29日に春秋社より発売された田中泯さんと松岡正剛さんの『意身伝心』の出版記念。泯さんのお弟子さんである石原淋さんの授名記念。泯さんが心から慕う舞踏家 土方巽さんの生誕85周年祝い。『鳥の歌』作曲者パブロ・カザルスの40回忌。そしてもちろん、井上鑑さんプロデュース[連歌 鳥の歌]プロジェクトのコンサートである。

個人的には、2012年12月、本楼の約2万冊に翻弄されたあのときからずっと、ISIS本楼において鑑さんが演奏なさることを切望していた。

本楼に採用されている特殊な吸音材。これによってひじょうに面白い音の空間になることは、ISIS移転記念イベント等を通じて体感していた。この空間で我が師匠が演奏なさったら、どのような音色になるのだろう? ずっと聴きたいと思っていた。ずっと心待ちにしていた。クローズドな集いですでに演奏されたことを知っても、諦めきれなかった。『そ乃香』の「本楼に誰を招いてほしいですか?」の問いにも、そのたびに「くどいですが。井上鑑さん」と書き綴っていた。苦笑いされても書き綴りたい毎回だった。

本日こうやって実現したことが、ひときわ嬉しかった。

カザルスと土方巽に捧げる一夜[意身伝神]

 松岡正剛(コトバ)

 田中泯(カラダ)

 石原淋(カラダ)

 井上鑑(音:Key)

 坂田明(音:Sax、Clarinet)

 バカボン鈴木(音:Contrabass)  [敬称略]

 

ゴートクジISISの入口に巨大パネル登場

 

ゴートクジISISの入口には、平間至さん撮影によるお二方の特性等身大パネルが置かれ、赤堤通りを走る車も興味津々、車から乗り出して撮影する人も……。

井寸房も[意身伝神]モードに彩られ、片隅には大根や菜っ葉たちが並んでいる。「田中泯農園」にて収穫された野菜たちだという。

(帰りに買おうと思っていたのに、あっという間に売り切れてしまった……愕然)

井寸房も意身伝神モード

 

本楼も、今宵は[意身伝神]モードに大変身。巨大な灯篭が灯り、校長直筆の書が煌めいている。

いつもは四方ぐるりと本に囲まれているが、立見客のために棚の本を取り除き、カウンター側からでも本楼を見渡せるようにしつらえてある。

本楼内部そのものも、いくつかの棚にぐるりと[意身伝神]のチラシを貼り巡らせ、それゆえか書棚から漂う重厚感が和らいでいる。さらには、パブロ・カザルス『鳥の歌』の楽譜、土方巽さんの著書「病める舞姫」の文字、「鳥の歌」の文字。黄泉の国からの客人をほんのり弔い招き入れる、そんな感じが漂ってくる。

いつもは「本楼」の額のある側が正面ステージになるが、今宵はテーブルと本棚を密着させて、椅子席もすべてテーブル側に向けられている。どうやら今宵はこのテーブル上で何かが起こる気配なり……。

意身伝神モードのISIS本楼

 

まずは松岡正剛さんご登場。今日の催しについてご紹介。退室するとすぐに本楼のすべての照明が消されてまっ暗闇に……と、ここまで書いたところで、今回もいったんここで止めることにする。まずはマインドマップを描いてしまいたくなった。パワーが残っていたら、続きのレポートを書きたいと思う。

今宵の[意身伝神]の宴を観賞しつつ、ふと頼豊先生の一言を思い出してしまっていた。

「『鳥の歌』は今も世界中で演奏されていますが、カザルスが『鳥の歌』にこめた意味と思想を知って演奏されているとは、かならずしもいいきれない」

 

今宵の宴は、"カザルスの『鳥の歌』" を知り尽くしたうえで表現してくださる皆さんだった。

"ただの『鳥の歌』"ではなく、明らかに "カザルスの『鳥の歌』" だった。いまだかなえられない世界平和と守られない民主主義。その悲しみを感じつつ、そんな中でもどこかで希望を見い出したい願いの込められた "カザルスの『鳥の歌』" だった。

[意身伝神]、音とカラダとコトバの饗宴は、極上の一夜でした。

ISIS本楼にて鑑師匠の音色を聴きたいという夢も叶い、本望です。

田中泯農園の野菜たちも濃厚で味わい深かったです。

[意身伝神]出演者の皆さま、関係者の皆さま、

極上の一夜を、心からありがとうございました。

 

PS

ゴートクジISISの集いは、心の吹き出しが丸見えになるのもとても面白い。

コートまでしっかり着込んで帰ろうとしたタイミングで第二段の料理がでてくることが判明し、再び戻って来て、料理の並んだテーブルの前を陣取って、コートを着たまま&荷物を抱えたまま黙々黙々と黙々と&延々と延々と食べ続けていた男女二人組。

頭からはたっぷりと「5,000円分の元を取らなくちゃ!」「5,000円分の元を取らなくちゃ!」と吹き出しが立ち上っているのも見えてしまい、思わず苦笑いしてしまった。二人組のところだけ、他の皆さんとは、明らかにオーラが違っていた。

ゴートクジISISで供されるお料理は、確かに毎回とても美味しい。今回は田中泯農園からの新鮮野菜も加わってますます美味しかった。作ってくださるお方に、「今日も楽しみにしています!」とご挨拶したくなるほど、すごく好き。

しかし、お料理はあくまでも、周囲の方々と歓談するためのエッセンスの一つ。「このお料理、とても美味しいですね」から始まり、初めてお目にかかる方々とお話する橋渡しの役目をする。特にゴートクジISISの空間には、「え、あの人が!?」という御方がさりげなく混ざっていらしたりする。そういう方々と直接お話できる貴重なチャンス。5,000円どころか、10,000円、いや、それ以上の価値を持っている。「5,000円分の元を取らなくちゃ!5,000円分の元を取らなくちゃ!」とテーブル前を陣取ってお料理だけを見つめて食べ続けていたら、その価値には永遠に気づけない。

でもまあ、すごく納得した。こういう輩だから、ライブのたびに毎回毎回毎回……(∞)、サイン+写真+握手+会話のフルセットをせしめるまで待ち伏せして帰らないのよね。なるほどなるほど至極納得。

ゴートクジISISはやはり面白い空間。いろいろな氣づきと発見の場。大好きデス。

 

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